さて次は、肝心のダムの代替案である。
代替案は「ありすぎるくらいだ」と、アメリカから来たIRN(インターナショナル.リバーズ.ネットワーク)のアビバさんはいった。①無駄を減らす②水利用システムの効率化③水関税を作る④排水の再利用⑤地下水をふやす⑥ため池、などなどいくらでもあるではないか。だからアメリカではすでに600のダムが撤去されているというのである。今後の撤去計画も目白押しだという。なんというあっけらかんさだ。うーむ。ぼくはうなった。 淀川水系流域委員会のことを思い出したのである。2003年1月、国の委員会として初めて「ダム原則中止」という日本の河川史に残る提言をしたひとたちのことだ。「なぜできたんですか」と聞くぼくに、かれらは「淀川には文化がある。それに気づいたからだ。」と笑った。ぼくは大事なものを大事というその心意気に感動した。提言を受けた国はまだダムにこだわっているので、かれらもなお奮闘を続けざるを得ない。でもそうやっていずれダム中止は日本でも常識になっていくのだ。 では台湾での代替案はどうか。土木工学の丁澈士屏東科技大学副教授は地下ダムをあげた。川の表流水をせき止めるのがダムで、地下水の流れをせき止めるのが地下ダムである。 林邊渓という川にその「地下堰堤」があると聞いて、翌日連れて行ってもらった。 地下堰だから上からは見えない。川底を掘って遮水壁を埋め、伏流水を集めて導水路に引いているのだ。乾期なのに用水路には毎秒2㌧の水がとうとうと流れている。あまりの美しさに手で掬って飲んでみた。おいしい! この「地下堰」は1923年につくられ、80年間で3回メンテナンスをしただけだという。特徴は、長持ちする。地元で維持管理ができる。お金もかからない。自然破壊をしない。全部巨大ダムの技術とは正反対だなあ。手帳に書き出していくうち、これは第十堰と同じではないか、と気がついた。「自然を押さえ込む技術」ではなく「自然と折り合いをつける技術」なんだ。2つが兄弟堰のような気がしてきて楽しくなった。 作ったのは鳥居信平という日本人技術者である。かれは尊敬されているようであった。アジアのダム建設の背後にJBICがあることを知って少し落ち込んだぼくは、80年も前にダムに替わる技術をそっと残してきた日本人技術者がいたことを知って元気になったのである。 (続く) 林邊渓にかかる橋についている人形 この台湾国際会議にはジャーナリストのまさのあつこさんが参加していた。 彼女は、「ダム日記」で木頭村の細川内ダム問題を全国に知らせたことで有名だ。 水問題に詳しく英語もペラペラの彼女からぼくは教わりっぱなしだった。そのまさのさんの台湾レポートが始まっている。まださわりであるが実におもしろい。まさのさんのブログはココ。http://www.viva.ne.jp/blog/wonwonatsuko/archives/cat_international.html(こんなふうにアドレスを書かなくてもぽんとクリックすればそちらに飛べる方法だれか教えてください。)
by himenom
| 2004-10-29 02:51
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