<   2004年 10月 ( 2 )   > この月の画像一覧

台湾のダム代替案国際会議 その2

さて次は、肝心のダムの代替案である。
代替案は「ありすぎるくらいだ」と、アメリカから来たIRN(インターナショナル.リバーズ.ネットワーク)のアビバさんはいった。①無駄を減らす②水利用システムの効率化③水関税を作る④排水の再利用⑤地下水をふやす⑥ため池、などなどいくらでもあるではないか。だからアメリカではすでに600のダムが撤去されているというのである。今後の撤去計画も目白押しだという。なんというあっけらかんさだ。うーむ。ぼくはうなった。

淀川水系流域委員会のことを思い出したのである。2003年1月、国の委員会として初めて「ダム原則中止」という日本の河川史に残る提言をしたひとたちのことだ。「なぜできたんですか」と聞くぼくに、かれらは「淀川には文化がある。それに気づいたからだ。」と笑った。ぼくは大事なものを大事というその心意気に感動した。提言を受けた国はまだダムにこだわっているので、かれらもなお奮闘を続けざるを得ない。でもそうやっていずれダム中止は日本でも常識になっていくのだ。
b0050788_2463289.jpg


では台湾での代替案はどうか。土木工学の丁澈士屏東科技大学副教授は地下ダムをあげた。川の表流水をせき止めるのがダムで、地下水の流れをせき止めるのが地下ダムである。
林邊渓という川にその「地下堰堤」があると聞いて、翌日連れて行ってもらった。
地下堰だから上からは見えない。川底を掘って遮水壁を埋め、伏流水を集めて導水路に引いているのだ。乾期なのに用水路には毎秒2㌧の水がとうとうと流れている。あまりの美しさに手で掬って飲んでみた。おいしい!
b0050788_24145.jpg


この「地下堰」は1923年につくられ、80年間で3回メンテナンスをしただけだという。特徴は、長持ちする。地元で維持管理ができる。お金もかからない。自然破壊をしない。全部巨大ダムの技術とは正反対だなあ。手帳に書き出していくうち、これは第十堰と同じではないか、と気がついた。「自然を押さえ込む技術」ではなく「自然と折り合いをつける技術」なんだ。2つが兄弟堰のような気がしてきて楽しくなった。

作ったのは鳥居信平という日本人技術者である。かれは尊敬されているようであった。アジアのダム建設の背後にJBICがあることを知って少し落ち込んだぼくは、80年も前にダムに替わる技術をそっと残してきた日本人技術者がいたことを知って元気になったのである。
(続く)
b0050788_2474250.jpg

林邊渓にかかる橋についている人形

この台湾国際会議にはジャーナリストのまさのあつこさんが参加していた。
彼女は、「ダム日記」で木頭村の細川内ダム問題を全国に知らせたことで有名だ。
水問題に詳しく英語もペラペラの彼女からぼくは教わりっぱなしだった。そのまさのさんの台湾レポートが始まっている。まださわりであるが実におもしろい。まさのさんのブログはココ。http://www.viva.ne.jp/blog/wonwonatsuko/archives/cat_international.html(こんなふうにアドレスを書かなくてもぽんとクリックすればそちらに飛べる方法だれか教えてください。)
[PR]
by himenom | 2004-10-29 02:51

台湾のダム代替案国際会議 その1

ダム代替案国際会議 2004/10/15~17 台北、高雄 
■テーマ「ダムを超えて」ー水管理のもう一つの考え方

b0050788_2331416.jpg○海外旅行が初めてのぼくは、英語も中国語もできないくせに、興味津々であった。
初日の会場となった台北市の世新大学には、台湾、香港、韓国、日本、ビルマ、タイ、カンボジア、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、アメリカなど13カ国から約100人の参加者が集まった。ベトナムの女性は赤ちゃん連れだ。NGOらしくてほほえましい。

まずアジアのダム事情。日本と韓国はよく似ている。水が余ってダムの目的が利水から治水になったことや、その根拠の数字が嘘だとNGOが反論しているのもなんだかそっくりである。台湾ではまだ水不足で工業用水など利水目的が多い。東南アジアは電力不足で発電目的が主流という。

住民運動も色合いが違う。東南アジアでは自然保護運動はいいが、ダム反対運動になったとたんに反政府運動とみなされるのだという。ビルマでは住民運動家が数人殺されているそうで、こういう会議への参加も危険なのだ。だから取材もとても配慮がいる。とジャーナリストのまさのあつこさんは眉をひそめた。

その理由は、多くのダム建設は先進国の融資でおこなわれるため、住民がどれだけ反対しようが政府の威信にかけて絶対にやり通すという構造があるからだという。そして悪いダム計画でも融資をやめないのが日本のJBICだ、と聞いてぼくは本当に恥ずかしかった。ダム反対で仲間を殺された彼らは、ぼくの「運動の成功例」の報告をどんな思いで聞いたのだろう。

ダムの代替案をテーマにした国際会議は珍しい。だから台湾の参加者は大学の研究者が多いようであった。中央政府の役人や企業からも来ている。反対集会というよりはアカデミックな雰囲気である。とはいえダム反対色の強い会議に政府の高級官僚(経済部水利署署長)が出席しているのには驚いた。かれは「水利署の者がコメントを用意してくれたが自分のことばで話します」と語り始めた。新鮮だった。経済一辺倒で作ったダムにさまざまな問題が出てることを具体的にあげながら「新規ダム建設は難しくなっている。持続可能な水管理が重要だ。」と締めくくった。陳水扁大統領の民主化の影響なのかと感じた。

b0050788_2342696.jpg○その陳大統領が凍結したのが美濃ダム計画である。ここは住民運動が非常に強いところだ。パンフレットを見てなるほどとうなずいた。「好男好女反水庫。好山好水留子孫」とある。水庫とはダムのことだ。わかりやすいスローガンである。巨大ダムの完成図も載っている。これを見たら誰もがダムを恐いと感じるであろう。実戦的なのである。訴えるべきテーマと相手をしっかりみているなと思った。

運動をリードしたのは美濃愛郷協進会というNGOである。彼らがすごいのは、人口4万人の美濃を一軒一軒を回って72%の反対世論を形成していったことである。ダムにもっとも関わりのある住民の意思をまとめあげていくことに運動の基盤を求め、それをやりぬいたのは並大抵ではない。一方今回の国際会議を企画主催したのも彼らであった。国際会議のテーマを「ダム反対」ではなく「ダム代替案」としたセンスも光っている。問題を大きな視野でとらえるセンスは運動の成功に不可欠のものである。

美濃の町は独特の風土を持つ。人口のほとんどが客家人で文化を大切にする。台湾で「博士」が一番多いのだそうだ。稲作やたばこ栽培で経済的にも豊かな土地柄である。彼らはダム問題を契機にコミュニティカレッジも創設した。若者が地方から都会をめざすのは台湾でも同じだが、美濃では定着する若者が多い。ふるさとへの愛着と誇りを原動力として未来のビジョンを持とうとする住民運動はポジティブであり、どっしりとして魅力的だ。

b0050788_2352370.jpg○国際会議のレジメ集を見て思わず笑ってしまった。なんとぼくの報告文のあとに「まんが第十堰」でひそかなブームとなった4コマまんが「ヘドロくんとシルトくん」の中国語版が載っているではないか。漢字というのはこんなに豊かな表現力をもっていたんだなあ。実におもしろいのである。期待がふくらんだ。というのは、美濃愛郷協進会の張正揚さんから「まんが第十堰」の中国語版を台湾で出版したいので承諾いただけませんか、と頼まれていたのだった。中国語版「まんが第十堰」は早ければ年内にも刊行される予定である。乞ご期待。

さて次は、肝心のダムの代替案である。
[PR]
by himenom | 2004-10-25 23:08