台湾のダム代替案国際会議 その1

ダム代替案国際会議 2004/10/15~17 台北、高雄 
■テーマ「ダムを超えて」ー水管理のもう一つの考え方

b0050788_2331416.jpg○海外旅行が初めてのぼくは、英語も中国語もできないくせに、興味津々であった。
初日の会場となった台北市の世新大学には、台湾、香港、韓国、日本、ビルマ、タイ、カンボジア、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、アメリカなど13カ国から約100人の参加者が集まった。ベトナムの女性は赤ちゃん連れだ。NGOらしくてほほえましい。

まずアジアのダム事情。日本と韓国はよく似ている。水が余ってダムの目的が利水から治水になったことや、その根拠の数字が嘘だとNGOが反論しているのもなんだかそっくりである。台湾ではまだ水不足で工業用水など利水目的が多い。東南アジアは電力不足で発電目的が主流という。

住民運動も色合いが違う。東南アジアでは自然保護運動はいいが、ダム反対運動になったとたんに反政府運動とみなされるのだという。ビルマでは住民運動家が数人殺されているそうで、こういう会議への参加も危険なのだ。だから取材もとても配慮がいる。とジャーナリストのまさのあつこさんは眉をひそめた。

その理由は、多くのダム建設は先進国の融資でおこなわれるため、住民がどれだけ反対しようが政府の威信にかけて絶対にやり通すという構造があるからだという。そして悪いダム計画でも融資をやめないのが日本のJBICだ、と聞いてぼくは本当に恥ずかしかった。ダム反対で仲間を殺された彼らは、ぼくの「運動の成功例」の報告をどんな思いで聞いたのだろう。

ダムの代替案をテーマにした国際会議は珍しい。だから台湾の参加者は大学の研究者が多いようであった。中央政府の役人や企業からも来ている。反対集会というよりはアカデミックな雰囲気である。とはいえダム反対色の強い会議に政府の高級官僚(経済部水利署署長)が出席しているのには驚いた。かれは「水利署の者がコメントを用意してくれたが自分のことばで話します」と語り始めた。新鮮だった。経済一辺倒で作ったダムにさまざまな問題が出てることを具体的にあげながら「新規ダム建設は難しくなっている。持続可能な水管理が重要だ。」と締めくくった。陳水扁大統領の民主化の影響なのかと感じた。

b0050788_2342696.jpg○その陳大統領が凍結したのが美濃ダム計画である。ここは住民運動が非常に強いところだ。パンフレットを見てなるほどとうなずいた。「好男好女反水庫。好山好水留子孫」とある。水庫とはダムのことだ。わかりやすいスローガンである。巨大ダムの完成図も載っている。これを見たら誰もがダムを恐いと感じるであろう。実戦的なのである。訴えるべきテーマと相手をしっかりみているなと思った。

運動をリードしたのは美濃愛郷協進会というNGOである。彼らがすごいのは、人口4万人の美濃を一軒一軒を回って72%の反対世論を形成していったことである。ダムにもっとも関わりのある住民の意思をまとめあげていくことに運動の基盤を求め、それをやりぬいたのは並大抵ではない。一方今回の国際会議を企画主催したのも彼らであった。国際会議のテーマを「ダム反対」ではなく「ダム代替案」としたセンスも光っている。問題を大きな視野でとらえるセンスは運動の成功に不可欠のものである。

美濃の町は独特の風土を持つ。人口のほとんどが客家人で文化を大切にする。台湾で「博士」が一番多いのだそうだ。稲作やたばこ栽培で経済的にも豊かな土地柄である。彼らはダム問題を契機にコミュニティカレッジも創設した。若者が地方から都会をめざすのは台湾でも同じだが、美濃では定着する若者が多い。ふるさとへの愛着と誇りを原動力として未来のビジョンを持とうとする住民運動はポジティブであり、どっしりとして魅力的だ。

b0050788_2352370.jpg○国際会議のレジメ集を見て思わず笑ってしまった。なんとぼくの報告文のあとに「まんが第十堰」でひそかなブームとなった4コマまんが「ヘドロくんとシルトくん」の中国語版が載っているではないか。漢字というのはこんなに豊かな表現力をもっていたんだなあ。実におもしろいのである。期待がふくらんだ。というのは、美濃愛郷協進会の張正揚さんから「まんが第十堰」の中国語版を台湾で出版したいので承諾いただけませんか、と頼まれていたのだった。中国語版「まんが第十堰」は早ければ年内にも刊行される予定である。乞ご期待。

さて次は、肝心のダムの代替案である。
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by himenom | 2004-10-25 23:08
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