「第十堰は補修できる」 10日国交省の第十堰公開調査

 いまどきの吉野川は寒い。11月には川ガキたちが川に飛び込むくらい暖かいのに、上流の山々が白くなるととたんに寒くなる。東西に流れる吉野川は、西風のかっこうの通り道となるからだ。
 だから冬場吉野川を訪れるひとは決して甘く見てはいけない。ぼくも、見栄えには目をつむって、ぬいぐるみのように着込んでいそいそと第十堰へ出かけたのだった。

 第十堰は、寒風のなか、50人を超える参加者である。推進派の30万人の会の人たちも4~5人来ている。彼らが来ているということは、まだせめぎあいが終わっていないということなのだ、という現実に気づく。でも、なんだかなつかしくなって、「やあ、お元気ですか」と駆け寄ってしまった。

 この日のメニューは、あらかじめ、決めてある12のポイントを順番に歩きながら、職員と徳大工学部教授3人から説明を聞くというもので、まあ、公開調査というよりは説明会である。
 ぼくは、10年間「第十堰補修はできない」と言い続けてきた国交省が、補修のための調査をするというので、いったいどんな説明をするんだろうか、と興味津々である。
 
 結果はなかなかおもしろいものだった。
 いくつかのやりとりを再現しておこう。
 
①「流れるべきでないところがざーざーと漏水している」と職員氏が開口一番。
おなじみの北岸ポイント、第十堰老朽化説の切り札現場の説明である。
すかさず誰かが「ここは堰を締め切るときのヒューム管が埋めてあるのを知らないんですか」
職員氏「・・・」(知らない)
さらに「それで旧吉野川の分水が支障でたんですか」
職員氏「いやそんなことは」

②つぎは「コンクリートにひび割れが走っている」
これまたおなじみの「老朽化現象」である。
やれやれまた昔の話がはじまるのか。うんざりしかけたぼくは、岡部先生に質問した。

「昭和30~40年代の砂利採取との関係はどうなんですか」
岡部氏「空洞化の原因は砂利採取による急激な河床低下です。今はもう安定しています。」

おっ、初めて聞くことばだ。変わった。

コンクリートが専門の橋本先生も言った。
「県管理時代のいぼコン部分と国管理時代の枠コン部分は違います。」
「初期欠陥によるひびわれも適切に対処できる。」

これらは、ずっと住民側が言い続けてきたことであった。
実際、昨年の史上最大の連続洪水にも、第十堰はなんともなかった。
「堰損壊の原因は急激な河床低下。だが昭和40年代の大補修と砂利採掘禁止で第十堰は安定した。だから第十堰は補修できる」
その主張は大洪水で検証され、そしてついに国交省のアドバイザーも認めたのである。

③つぎに見せられたのは南岸の堤防護岸の覆土の流出である。
岡部氏「原因として洗掘か吸い出し崩れが考えられるが、私は崩れだと思う」
ぼく「なにか手当が必要ですか」
岡部氏「必要ありません」

可動堰の根拠のひとつは「深掘れ」。つまり斜め堰のため、洪水の流れが折り曲げられて南岸堤防が洗掘される、と言っていたのだが、岡部先生が「40~50年分の洪水がいっぺんに来た」と形容した昨年秋の大増水でも南岸堤防はなんともなかったのだった。

さらに、堰の中央部の根固めブロックが一部流されていたが、その流された方向は河道に平行であった。洪水の流れは第十堰によって折り曲げられはしなかったのである。

④またさらに新しい事実が明らかになった。
ここ数年、洪水流が上堰方面に突っ込んでくるようになった、と地元の人たちが指摘していた点である。そのため徳島市の伏流水取水施設が流された。もっともそのおかげで堆積土砂が流されて上堰の見事な石畳が発見されたわけだが、このまま放っておくと上堰も危ない。

岡部先生は「六条大橋周辺の砂州が大きくなって固定化したためだ。」と言った。そしてそれは「河道内樹木の繁茂を放置してあったからだ」と続けた。その結果「洪水流は勢いを増してぶつかってくるようになったのだ」というのである。

なるほど23号台風で六条の低水護岸がやられたのもこれが原因だったのか。河原に木が茂ったのはダムによって中小増水をおさえたためであるが、これは計画的な河道管理をすることで解決できることだ。当然しないといけない。
このようにして問題は、第十堰ではないことが、つぎつぎと明らかになってきたのである。

そういえば、旧建設省の模型実験は、河道内に樹木をいっぱいおいて計画高水位を超えるという結果を出していた。住民側は「ならば木を切れば可動堰はいらないじゃないか」とあきれかえったことを思い出した。

もう一度整理をしてみる。
①河床低下と第十堰損傷の関係が明言された。いぼコンと枠コンの違いが明言された。その結果、第十堰は補修できることが明らかになった。
②斜め堰による堤防洗掘は起こらなかった。
③第十堰は治水上の問題を起こしていなかった。むしろ樹木繁茂による砂州固定化が放置できない問題である。
 
 一方で緊急課題も明らかになった。
 国交省が上堰について、ほとんど知識がなく、重要視していない点である。また岡部先生も「個人的にはいらない」との考えだ。他の2人のアドバイザーはコンクリートの専門家である。すると多くの住民が望む青石の第十堰補修というのはどうなるかわからないことになる。
 国交省は3月末までに補修計画をまとめるというので、早急な対応が必要であろう。
 
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by himenom | 2005-01-11 11:21
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